自宅という、医療スタッフがいない環境で治療を行う在宅透析において、患者さんとその家族が最も不安に感じるのが、「もしもの時」、つまり、治療中にトラブルや急変が起きた場合の対応です。この不安を解消し、安全を確保するために、在宅透析を始める前には、徹底した緊急時対応のトレーニングが行われ、24時間体制のサポートシステムが構築されています。まず、在宅血液透析の場合、透析装置そのものに、高度な安全監視機能が組み込まれています。血圧の異常や、回路内の気泡、漏血などを検知すると、即座に大音量のアラームが鳴り、自動的に治療を安全な状態で中断する仕組みになっています。トレーニングでは、どのようなアラームが、どのような異常を示しているのか、そして、そのアラームに対して、まず何をすべきかという、具体的な対処法を、繰り返し学びます。多くの場合は、マニュアルに従って簡単な操作をすれば解決できますが、それでも解決しない場合や、患者さんの体調に明らかな変化(意識レベルの低下、呼吸困難など)が見られる場合には、ためらわずに「緊急連絡」を行います。在宅透析をサポートする医療機関は、必ず24時間対応の緊急連絡用の電話番号を用意しています。電話をかけると、専門の知識を持った医師や看護師、臨床工学技士が待機しており、電話口で具体的な状況を聞き取り、的確な指示を与えてくれます。「機械のこのボタンを押してください」「血圧を測ってください」といった指示に従い、それでも状況が改善しない場合は、救急車の要請や、医療スタッフの緊急訪問といった、次のステップへと移行します。腹膜透析の場合も同様で、腹痛や透析排液の混濁といった「腹膜炎」を疑う症状が出た際には、すぐに医療機関に連絡することが、重症化を防ぐ鍵となります。在宅透析は、決して患者と家族が孤立無援の状態で行うものではありません。目に見えない24時間のサポート体制という、強力なセーフティーネットに守られているのです。
もしもの時どうする?在宅透析の緊急時対応