「病院でもらうロキソニンは危ないかもしれないけど、薬局で売っている市販のロキソニンSなら、量が少ないし大丈夫だろう」。これは、透析患者さんが陥りがちな、最も危険な誤解の一つです。結論から言うと、医療用であろうと、市販薬であろうと、ロキソニンに含まれる有効成分「ロキソプロフェン」は全く同じものであり、その危険性に変わりはありません。むしろ、医師の管理下にない「自己判断による市販薬の服用」は、より大きなリスクを伴います。なぜなら、そこには専門家によるリスク評価と、副作用への備えが、全く存在しないからです。市販薬のパッケージには、「長期連用しないこと」「医師、歯科医師又は薬剤師に相談すること」といった注意書きが記載されていますが、透析患者さんが抱える特殊なリスクについてまで、詳細に言及されているわけではありません。残存腎機能への影響や、消化管出血のリスク、心血管系への影響といった、専門的な知識がなければ、その危険性の重さを正しく理解することは困難です。また、市販の風邪薬や他の鎮痛薬の中にも、気づかないうちに、ロキソニン以外のNSAIDs成分(イブプロフェンなど)が含まれていることが多く、複数の薬を併用してしまうことで、副作用のリスクをさらに増大させてしまう危険性もあります。痛みを感じた時、病院に行くのが面倒だからと、安易に自宅の薬箱やドラッグストアの薬に手を伸ばしてしまう行為は、自分の命綱である残存腎機能や、消化管の健康を、自ら危険に晒す行為に他なりません。透析患者さんにとって、薬に関する絶対的なルールは、「全ての薬は、必ず透析施設の主治医の許可を得てから服用する」ということです。漢方薬やサプリメントであっても例外ではありません。自己判断は、最も避けなければならない、最大の危険なのです。