透析治療を開始した後でも、まだある程度の尿が出ている状態。これを、医学的に「残存腎機能(ざんぞんじんきのう)が保たれている」と呼びます。この残っているわずかな腎臓の働きは、透析患者さんの生活の質(QOL)を大きく左右する、まさに「宝物」とも言える非常に重要なものです。尿が出るということは、単にトイレに行く習慣が残るというだけでなく、患者さんの体にとって、計り知れないほどの多くのメリットをもたらします。まず、最大のメリットが「水分・塩分制限の緩和」です。尿として体外に水分や塩分を排出できるため、次の透析までの体重増加をコントロールしやすくなります。「飲みたいのに飲めない」という、透析患者さんにとって最もつらい水分制限が、尿が出ない人に比べて、比較的緩やかになります。これは、精神的なストレスを軽減する上で、非常に大きな意味を持ちます。次に、「食事制限の緩和」も期待できます。カリウムやリンといった、透析患者さんが厳しく制限しなければならない老廃物の一部も、尿と共に排出されます。そのため、食事の選択肢が広がり、食生活の楽しみを維持しやすくなります。さらに、医学的にも重要なメリットがあります。体液量の管理が容易になることで、心臓への負担が軽減され、血圧のコントロールも良好になる傾向があります。透析治療で急激に大量の水分を除去する必要がなくなるため、透析中の血圧低下などの副作用も起こりにくくなります。そして、最も重要なこととして、数多くの研究から、この残存腎機能が維持されている患者さんの方が、完全に無尿になった患者さんに比べて、心血管系の合併症が少なく、結果として「生命予後が良い(長生きできる)」ということが、科学的に証明されています。この残されたわずかな尿は、いわば「もう一つの腎臓」。それをいかに大切に、そして長く維持していくかが、質の高い透析ライフを送るための鍵となるのです。
「残存腎機能」の重要性、尿が出ることの大きなメリット