医療スタッフによる慎重な予防策にもかかわらず、透析不均衡症候群の軽い症状(頭痛や吐き気など)が、透析中や透析後に現れてしまうことは、特に導入期には珍しいことではありません。そのような時、患者さん自身がどのように対処すべきかを知っておくことは、症状の悪化を防ぎ、不安を和らげる上で非常に重要です。まず、最も大切なことは、「症状を我慢せず、すぐに医療スタッフに伝えること」です。透析中に、頭痛、吐き気、めまい、足のつり、視界のかすみといった、普段とは違う何らかの体調変化を感じたら、たとえそれが些細なことであっても、遠慮せずにナースコールでスタッフを呼んでください。「これくらいは普通だろう」「我慢していれば治るだろう」といった自己判断は禁物です。症状の報告を受けた医療スタッフは、それが不均衡症候群の兆候である可能性を念頭に置き、迅速に対応します。まず、血圧などのバイタルサインを確認し、透析装置の設定を見直します。具体的には、血液を体外に引き抜くスピード(除水速度)を緩めたり、血液ポンプの流量を下げたりして、体への負担を軽減します。症状が強い場合には、一時的に透析を中断したり、医師の判断で、グリセロールなどの浸透圧物質を点滴投与したりすることもあります。また、透析が無事に終了し、帰宅した後に症状が現れたり、悪化したりした場合も、決して放置してはいけません。すぐに通院している透析施設に電話で連絡し、症状を詳しく伝え、指示を仰いでください。多くの場合、症状は時間と共に自然に軽快しますが、頭痛がひどい場合には、処方された鎮痛剤を服用することもあります。症状を正確に伝えるという、患者さん自身の行動が、迅速で適切な治療に繋がる、最も重要な鍵となるのです。