患者さんにとっては、自己負担額が重要であるため、診療報酬点数そのものを意識する機会は少ないかもしれません。しかし、透析治療を提供しているクリニックや病院にとって、この点数は、経営の根幹をなす「収入」そのものであり、その動向は死活問題です。透析施設の収入は、基本的に「患者数 × 1回あたりの平均点数 × 10円」で計算されます。つまり、診療報酬点数が、どのような医療行為に対して、どのくらい高く設定されているかによって、クリニックの経営戦略や、提供される医療の質が、大きく左右されることになるのです。例えば、現在の診療報酬体系では、4時間以上の長時間透析は、4時間未満の透析よりも高い点数が設定されています。これは、長時間透析の方が、より多くの老廃物を除去でき、患者さんの予後が良いという医学的根拠に基づき、国が長時間透析を推奨していることの表れです。また、通常の血液透析(HD)よりも、さらに多くの老廃物を除去できる「オンラインHDF(血液透析濾過)」という治療法に対しても、高い点数がつけられています。これも、より質の高い治療を普及させるための、点数による誘導策と言えます。さらに、透析液の清浄度を極めて高いレベルで維持管理している施設に与えられる「透析液水質確保加算」や、十分な数の看護師や臨床工学技士を配置し、フットケアや栄養指導といった、きめ細やかな患者管理を行っている施設が算定できる加算点数も存在します。これらの加算点数は、クリニックにとって重要な収入源であると同時に、より良い医療を提供するための設備投資や人材確保へのインセンティブ(動機付け)となります。このように、診療報酬点数の体系は、単なる価格表ではなく、国が透析医療に求める「質」の方向性を指し示す、重要な羅針盤としての役割も果たしているのです。