血液透析のサイト

2026年7月
  • 見えない戦い、透析患者を縛る厳しい食事制限

    医療

    透析患者の生活において、治療そのものと同じくらい、あるいはそれ以上に重要で、かつ過酷なのが、日々の「食事療法」です。透析患者にとって、食事は、単なる楽しみや栄養補給ではなく、体内の環境を安定させ、合併症を防ぐための、極めて重要な「治療の一環」です。その制限は、多岐にわたり、非常に厳格です。まず、最大の敵となるのが「水分」と「塩分」です。尿として水分を排出できないため、飲んだ水分は全て体内に溜まり、心臓や肺に大きな負担をかけます。この水分摂取量を抑えるために、喉の渇きを誘発する塩分を、1日6g未満という厳しい基準で制限しなければなりません。次に、命に直結するのが「カリウム」の制限です。カリウムは、野菜や果物、いも類に多く含まれますが、体内に蓄積すると、致死的な不整脈や心停止を引き起こす危険性があります。そのため、生野菜や果物の摂取は原則として禁止され、野菜は茹でこぼすなどの下処理が必須となります。さらに、「リン」の管理も欠かせません。リンは、乳製品や加工食品、タンパク質食品に多く含まれ、体内に溜まると、骨をもろくしたり、血管を石灰化させて動脈硬化を進行させたりします。多くの患者は、食事と一緒に「リン吸着薬」という薬を服用し、リンの吸収を抑えなければなりません。一方で、透析によって失われてしまう「タンパク質」や、生命活動に必要な「エネルギー(カロリー)」は、逆に、十分に摂取することが求められます。つまり、透析患者の食事は、「制限すべきものは極限まで制限し、摂るべきものはしっかり摂る」という、非常に複雑な栄養バランスの上に成り立っているのです。この見えない日々の戦いを、強い意志で続ける自己管理能力こそが、透析患者の健康と長寿を支える、最大の鍵となります。