胃腸障害と心血管リスク、腎臓以外の副作用
ロキソニンのようなNSAIDsが透析患者さんにもたらす危険性は、腎機能への影響だけにとどまりません。体内に薬の成分が蓄積しやすい透析患者さんでは、腎臓以外の臓器に対しても、健常者より強い副作用が現れる可能性があります。まず、最も頻繁に見られる副作用が、「消化管障害(胃腸障害)」です。NSAIDsがブロックするプロスタグランジンには、胃酸から胃の粘膜を守る粘液の分泌を促すという、重要な役割があります。NSAIDsを服用すると、この防御機能が低下するため、胃酸の攻撃によって胃の粘膜が荒れ、胃痛や胃もたれ、胸やけといった症状が現れやすくなります。ひどい場合には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こし、吐血や下血といった、命に関わる消化管出血に至る危険性もあります。透析患者さんは、尿毒症の影響などから、もともと消化管の粘膜が弱っている傾向があるため、特に注意が必要です。この副作用を防ぐため、NSAIDsを処方する際には、胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)が一緒に処方されることが一般的です。次に、近年、大きな問題として注目されているのが、「心血管系へのリスク」です。一部のNSAIDs、特にCOX-2選択的阻害薬と呼ばれるタイプの薬は、血栓(血の塊)ができやすくなる傾向があり、長期間服用すると、心筋梗塞や脳梗塞といった、心血管系のイベントのリスクを高める可能性が指摘されています。透析患者さんは、動脈硬化が進行しており、もともと心筋梗梗塞や脳梗塞のリスクが非常に高いハイリスク群です。そのため、NSAIDsの服用は、そのリスクをさらに上乗せしてしまう危険性をはらんでいます。これらの腎臓以外の副作用も、決して軽視できない、重大な危険性なのです。