透析治療を始めると、将来への備えとして、新たに生命保険への加入を考える方もいるかもしれません。しかし、残念ながら、人工透析を受けている方が、一般的な死亡保険や医療保険に、新たに加入することは、極めて困難であるのが現実です。生命保険は、多くの健康な人々が保険料を出し合い、その中から万が一のことがあった少数の人に保険金を支払うという、「相互扶助」の仕組みで成り立っています。そのため、保険会社は、加入希望者の健康状態を評価し、将来の保険金支払いのリスクが高いと判断した人の加入を断る(謝絶する)ことがあります。これを「引き受け」の判断と呼びます。透析患者さんは、健常者に比べて、心血管系の合併症などで死亡するリスクが統計的に高いことが知られています。そのため、保険会社から見ると、「保険金支払いのリスクが非常に高いグループ」と見なされてしまい、ほとんどの一般的な保険商品では、加入の引き受けが困難となるのです。ただし、可能性が全くゼロというわけではありません。近年では、保険会社の引き受け基準を緩和した「引受基準緩和型医療保険」や、告知項目がさらに少ない「無選択型医療保険」といった商品が登場しています。これらの保険は、持病や既往症がある人でも加入しやすいように設計されていますが、その分、通常の保険に比べて、保険料が割高であったり、保障内容に一定の制限(例えば、加入後一定期間は保障額が減額されるなど)が設けられていたりします。もし、どうしても新たな保障が必要な場合は、これらの商品を検討することになりますが、その必要性や、保険料と保障内容のバランスを、慎重に見極める必要があります。基本的には、透析導入後は、新たな保険に頼るのではなく、既存の公的制度(障害年金など)や、これまでに加入している保険を最大限に活用し、生活設計を立てていくことが、現実的なアプローチとなります。
生命保険への加入、透析患者が直面する現実