最大のリスクとの戦い、カテーテル感染症の恐怖
長期留置カテーテルが持つ、最大のデメリットであり、最も警戒すべき危険性、それが「カテーテル関連血流感染症(CRBSI)」をはじめとする「感染症」のリスクです。内シャントが、皮膚という体の強力なバリア機能に守られているのに対し、カテーテルは、皮膚を貫通して、直接、体の中心静脈、ひいては心臓へと繋がっている、いわば細菌にとっての「高速道路」のようなものです。そのため、シャントに比べて、感染症を引き起こすリスクが格段に高くなります。カテーテル感染症には、いくつかの種類があります。まず、カテーテルが皮膚から出ている「出口部」が、赤く腫れたり、膿が出たりする「出口部感染」。次に、皮膚の下のカテーテルが通るトンネルに沿って感染が広がる「トンネル感染」。そして、最も重篤なのが、細菌がカテーテルの内側や外側を伝って血流に入り込み、全身に広がってしまう「カテーテル関連血流感染症」です。これは、高熱や悪寒、血圧低下などを引き起こす「敗血症」という、命に関わる非常に危険な状態であり、速やかな抗生物質の投与と、原因となっているカテーテルの抜去が必要となります。この感染症のリスクを最小限に抑えるためには、日々の厳格な自己管理が不可欠です。カテーテルの出口部は、常に清潔で乾燥した状態に保ち、防水性のフィルムで確実に保護しなければなりません。透析施設では、治療のたびに専門のスタッフが厳重な消毒を行いますが、自宅での生活においても、汗をかいたらフィルムを貼り替える、絶対に濡らさない、汚れた手で触らないといった、細心の注意が求められます。この見えない敵である細菌との戦いこそが、カテーテルと共に生きていく上での、最も重要な課題なのです。