一度失われてしまった腎臓の機能を、元通りに回復させることは、残念ながら現在の医学では困難です。しかし、透析導入後にもわずかに残っている「残存腎機能」、つまり尿を作る力を、できるだけ長く維持するために、患者さん自身ができることがいくつかあります。この宝物である尿量を守るための努力は、日々の生活の質を保つ上で非常に重要です。まず、最も大切なのが「血圧の厳格な管理」です。高血圧は、腎臓の中の細い血管(糸球体)に常に高い圧力をかけ、ダメージを与え続ける最大の要因です。医師から処方された降圧薬をきちんと服用し、家庭でも血圧を測定する習慣をつけ、目標範囲内にコントロールすることが、腎臓を守るための基本中の基本です。もちろん、そのためには厳しい塩分制限が不可欠です。次に、意外に思われるかもしれませんが、「透析間の体重増加を抑えること」も、腎臓を守る上で極めて重要です。水分を摂り過ぎて体重が増えすぎると、透析治療の際に、短時間で大量の水分を除去(除水)しなければなりません。この急激な除水は、体全体の血圧を低下させ、腎臓へ流れる血液の量を一時的に減少させてしまいます。この腎虚血の状態が繰り返されることが、残存腎機能にダメージを与え、尿量を減少させる大きな原因となるのです。つまり、日々の水分・塩分管理を徹底し、緩やかな除水で済むようにすることが、結果的に自分の腎臓をいたわることに繋がります。このほかにも、「腎毒性のある薬剤を避ける」ことも大切です。市販の痛み止め(NSAIDs)や一部の抗生物質、検査で使われる造影剤などは、腎臓に負担をかけることが知られています。他の病気で薬を処方してもらう際には、必ず自分が透析患者であることを伝え、腎臓に優しい薬を選んでもらうようにしましょう。また、喫煙は血管を収縮させ、腎臓の血流を悪化させるため、「禁煙」も必須です。これらの地道な努力の積み重ねが、貴重な尿量を一日でも長く保つための、最も確実な道筋となります。
尿量を守るためにできること、残存腎機能を長持ちさせる秘訣