透析治療の品質と安全性を左右する、目に見えない、しかし極めて重要な要素が「透析液の清浄度」です。透析液は、患者の血液と、ダイアライザーの薄い膜一枚を隔てて接触するため、その水質は、患者の生命予後に直接的な影響を与えます。この極めてクリーンな透析液の元となる「超純水」を作り出しているのが、透析施設の裏側で稼働している巨大な「水処理装置」、特にその心臓部である「RO(Reverse Osmosis)装置」です。私たちが普段使っている水道水には、カルシウムやマグネシウムといった電解質のほか、微量の重金属や塩素、そして細菌やその死骸から生じる毒素(エンドトキシン)などが含まれています。もし、このような水で透析液を作ってしまうと、これらの不純物が透析膜を介して患者の血液中に入り込み、発熱や炎症、長期的には動脈硬化やアミロイドーシスといった、深刻な合併症を引き起こす原因となります。RO装置は、この水道水を、逆浸透(Reverse Osmosis)という原理を用いて、分子レベルで浄化します。逆浸透膜(RO膜)という、水の分子は通すが、イオンや不純物はほとんど通さない、極めて微細な穴を持つフィルターに、高い圧力をかけて水道水を通すことで、純粋な水分子だけを取り出すのです。このRO装置に加え、水処理システムは、活性炭フィルターで塩素を除去し、軟水化装置で硬度成分を取り除くなど、何重ものフィルターと浄化プロセスを組み合わせ、水道水を徹底的に磨き上げていきます。さらに、浄化された水が配管内で細菌に汚染されるのを防ぐため、紫外線殺菌灯や定期的な配管洗浄なども行われます。日本の透析医療の水準が世界的に見ても非常に高いのは、この目に見えない「水」の品質管理を、各施設が徹底して行っているからに他なりません。