透析治療は、腎臓の機能を代替し、生命を維持してくれますが、残念ながら、健康な腎臓の全ての働きを完璧に補えるわけではありません。そのため、透析治療を長期間続けていくと、様々な「合併症」が、ゆっくりと、しかし確実に進行してきます。透析患者が、健やかで長い人生を送るためには、これらの合併症をいかに予防し、早期に発見・治療していくかという、もう一つの戦いに向き合う必要があります。まず、透析患者の生命予後を決定する、最も重大な合併症が、「心血管系の疾患」です。透析患者さんは、水分・塩分の過剰による高血圧や、リンの蓄積による血管の石灰化などによって、動脈硬化が健常者の何倍ものスピードで進行します。その結果、心筋梗塞や狭心症、心不全、脳梗塞といった、心臓や血管の病気が、死因の第一位となっています。次に、深刻なのが「骨・ミネラルの異常」です。腎臓は、カルシウムとリンのバランスを調節し、骨を健康に保つビタミンDを活性化させる働きも担っています。この機能が失われるため、透析患者さんは、骨がもろくなって骨折しやすくなったり、関節に激しい痛みが現れたりする「腎性骨症」という状態になりやすくなります。さらに、「腎性貧血」も、ほとんどの透析患者さんが経験する合併症です。腎臓は、赤血球を作るように指令を出す「エリスロポエチン」というホルモンを産生しています。腎機能が低下すると、このホルモンが作られなくなり、貧血が進行します。これにより、息切れや動悸、倦怠感といった症状が現れます。このほかにも、かゆみ(掻痒症)、足がむずむずする「むずむず脚症候群」、栄養障害など、その悩みは全身に及びます。これらの合併症と戦うために、透析患者さんは、透析治療そのものに加えて、多くの薬を服用し、定期的な検査を受けながら、総合的な健康管理を続けていく必要があるのです。
透析患者が向き合う合併症、心臓・血管・骨