透析治療には、週3回通院する「血液透析(HD)」と、主に自宅で行う「腹膜透析(PD)」の二つの方法がありますが、この治療法の違いが、残存腎機能、つまり「尿量の維持」に影響を与える可能性があることが、多くの研究で示されています。結論から言うと、一般的には「腹膜透析の方が、血液透析に比べて、残存腎機能が長く保たれやすい」という傾向があります。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか。その最大の理由は、体からの水分の除去(除水)の仕方にあります。血液透析は、週3回、1回4〜5時間という短時間で、次の透析までに溜まった2〜3日分の水分を、急激に体から引き抜きます。この急激な除水は、時に血圧の低下を引き起こし、腎臓そのものへ流れる血液量を一時的に減少させてしまいます。この腎臓への血流低下が、いわば「追い打ち」のようなダメージとなり、残っていたわずかな腎機能を、さらに低下させてしまう一因と考えられています。一方、腹膜透析は、24時間365日、絶え間なく、そして非常にゆっくりとしたペースで、持続的に水分と老廃物を除去します。そのため、血液透析のような急激な体液の変動や、血圧の低下が起こりにくく、体への負担が非常に穏やかです。腎臓への血流も安定して保たれるため、残存腎機能がダメージを受けにくく、結果として、尿量が維持されやすいのです。実際に、透析導入後の尿量の減少スピードを比較した研究では、腹膜透析の患者さんの方が、血液透析の患者さんよりも、明らかに緩やかであったと報告されています。もちろん、これはあくまで一般的な傾向であり、血液透析であっても、透析間の体重増加を厳しく管理し、緩やかな除水設定(長時間透析など)を行えば、残存腎機能を長く維持することは可能です。しかし、この「残存腎機能の維持」という観点は、これから透析を導入する患者さんが、どちらの治療法を選択するかを考える上で、非常に重要な判断材料の一つとなるのです。