自分の血管が使えない時の選択肢、人工血管(グラフト)
長年の糖尿病や動脈硬化、あるいは過去の手術などで、腕の静脈が細くなってしまっていたり、詰まってしまっていたりして、内シャントを作るのに適した自己血管がない場合があります。そのような場合に選択されるのが、「人工血管(グラフト)を用いた内シャント」です。これは、その名の通り、フッ素樹脂などで作られた、直径6mm程度の柔らかいチューブ状の人工血管を、自分の血管の代わりとして皮膚の下に埋め込み、動脈と静脈の間を橋渡し(バイパス)する方法です。手術では、例えば肘の近くの動脈と、腕の付け根近くの静脈を、この人工血管でつなぎます。すると、動脈血が人工血管の中を通り、静脈へと流れていきます。透析の際には、皮膚の上から、この埋め込まれた人工血管に直接針を刺して、血液の出し入れを行います。人工血管(グラフト)の最大のメリットは、自己血管が細い患者さんでも、比較的確実にバスキュラーアクセスを作製できる点です。また、人工血管は最初から十分な太さがあるため、手術後、自己血管シャントのように血管が成熟するのを待つ必要がなく、比較的早い時期(2〜3週間程度)から透析を開始できるという利点もあります。しかし、デメリットもあります。人工血管は、あくまで体にとっては「異物」であるため、自己血管シャントに比べて、細菌感染を起こしやすかったり、血液が固まって詰まりやすい(閉塞)といったトラブルが起こる頻度が高いとされています。そのため、シャント部分の皮膚を常に清潔に保つなど、自己血管シャント以上に丁寧な自己管理が求められます。