アセトアミノフェンでは効果が不十分な、強い炎症を伴う痛みや、手術後の痛みなど、どうしてもロキソニンのようなNSAIDsの強力な鎮痛・抗炎症作用が必要となる場面もあります。そのような場合に限り、透析施設の主治医は、その必要性と危険性を天秤にかけ、極めて慎重な判断のもとで、NSAIDsを処方することがあります。この時、医師は、副作用のリスクを最小限に抑えるための、いくつかの特別な配慮を行います。まず、「最小有効量の、短期間投与」が絶対的な原則です。だらだらと長期間使い続けることは、副作用のリスクを著しく高めるため、痛みの原因が改善され、症状が和らぎ次第、速やかに中止することが求められます。漫然と「いつもの痛み止め」として処方されることは、決してありません。次に、「投与量の調整」です。透析患者さんは、薬の排泄能力が低下しているため、健常者と同じ量を服用すると、血中濃度が異常に高くなってしまう危険性があります。そのため、医師は、通常の投与量よりも少ない量から開始し、効果と副作用のバランスを見ながら、慎重に投与量を調整します。また、「胃薬の併用」も、ほぼ必須となります。前述の通り、NSAIDsによる消化管障害のリスクを軽減するため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーといった、胃酸の分泌を抑える薬が、必ずと言っていいほど一緒に処方されます。そして、最も重要なのが、「厳重なモニタリング」です。NSAIDsの投与中は、残存腎機能の指標である尿量の変化や、血液検査における腎機能の数値、貧血の進行(消化管出血のサイン)、そして血圧の変動などを、通常以上に注意深く監視します。もし、副作用を疑うわずかな兆候でも見られた場合には、すぐに薬を中止する判断が下されます。このように、透析患者さんへのロキソニンの処方は、専門家による厳格なリスク管理という、目に見えない安全網に守られて、初めて可能になるのです。
それでもロキソニンが必要な時、医師の厳格な処方