在宅透析の中で、現在、より多くの患者さんに選択されているのが「腹膜透析(Peritoneal Dialysis, PD)」です。この方法は、機械や血液回路を使うのではなく、私たち自身の体の中に元々備わっている「腹膜」という、天然のフィルターを利用するのが最大の特徴です。腹膜とは、お腹の中の胃や腸といった内臓を覆っている、薄くて柔らかい膜のことです。この膜の表面には、毛細血管が網の目のようにびっしりと張り巡らされており、目に見えないほどの無数の小さな穴が開いた、非常に優れた半透膜として機能します。腹膜透析を始める前には、まず、お腹の皮膚から腹腔(お腹の中の空間)へ通じる、「カテーテル」と呼ばれる、直径5mmほどの柔らかいチューブを埋め込む、簡単な外科手術を受けます。このカテーテルが、生涯にわたって、透析液を体の内外へ出し入れするための、唯一の出入り口となります。実際の治療は、「バッグ交換」と呼ばれる操作を、患者さん自身や、その家族が、自宅の清潔な環境で行います。まず、ブドウ糖などを含んだ、きれいな透析液のバッグをカテーテルに接続し、自分のお腹の中へ、ゆっくりと注入します。そして、カテーテルを閉じ、その透析液を4〜8時間ほど、お腹の中に溜めておきます。この溜めている時間(貯留時間)に、腹膜を介して、血液中の老廃物や余分な水分、塩分などが、濃度の差によって、じわじわと透析液側へと引き寄せられていきます。時間が来たら、今度は空の排液バッグをカテーテルに接続し、老廃物で汚れた透析液を、重力を利用して体外へ排出します。そして、再び新しい透析液を注入する。この一連のバッグ交換を、日常生活の中で、1日に3〜4回繰り返します。通院は月に1〜2回の定期検診だけで済むため、時間的な自由度が非常に高いのが、腹膜透析の最大のメリットです。
お腹の膜が腎臓になる、「腹膜透析(PD)」の仕組み