人工透析は、腎臓の機能が失われた患者さんの生命を維持するための、不可欠で高度な医療です。しかし、この治療を生涯にわたって継続していくことは、患者さんとその家族に、身体的な負担だけでなく、非常に重い経済的な負担を強いるという厳しい現実があります。週に3回、半日近くを費やす通院は、多くの患者さんにとって、これまで通りに仕事を続けることを困難にします。体力の低下や合併症のリスクも相まって、退職や転職を余儀なくされたり、そもそも就労が困難になったりするケースは少なくありません。収入が減少、あるいは途絶えてしまう一方で、透析治療そのものにかかる医療費は、本来であれば極めて高額です。もちろん、日本では公的な医療保険制度や助成制度によって、その自己負担は大幅に軽減されますが、それでも通院のための交通費や、厳しい食事療法にかかる食費など、日々の生活コストは決して軽視できません。こうした状況の中で、治療を続けながら、人間としての尊厳を保ち、最低限度の文化的な生活を送るための最後のセーフティーネットとして機能するのが「生活保護制度」です。透析治療と生活保護は、決して無関係ではありません。むしろ、高額な医療を必要とする疾患を抱えながら、就労による収入確保が困難になるという、透析患者さんが直面する典型的な課題に対して、社会全体で支えるための、密接に連携した制度なのです。生活保護の利用に対して、心理的な抵抗感や、世間体を気にする方もいるかもしれません。しかし、これは決して特別なことではなく、病気や障害によって生活に困窮した際に、誰もが利用する権利のある、憲法で保障された国民の権利です。透析治療という困難な現実と向き合い、命を繋いでいくために、この重要な制度を正しく理解することは、何よりも大切なことなのです。