透析不均衡症候群は、全ての透析患者に等しく起こるわけではなく、いくつかの特定の条件下で、そのリスクが高まることが知られています。自分がハイリスク群に当てはまるかどうかを事前に知っておくことは、予防策を講じる上で非常に重要です。まず、最もリスクが高いとされるのが、「透析導入期の患者さん」です。これは、長期間にわたって体内に老廃物が大量に蓄積した「尿毒症」の状態に体が慣れてしまっており、初めての透析による急激な環境変化の影響を、最も受けやすいためです。特に、透析導入前の血液検査で、尿素窒素(BUN)の値が極めて高い患者さんほど、そのリスクは増大します。次に、「高齢者」や「小児」も、リスクが高いグループです。高齢者は、加齢によって脳の萎縮が見られたり、動脈硬化が進んでいたりするため、体液の急激な変動に対する脳の適応能力が低下していると考えられています。小児の場合は、体重に比して脳の容積が大きく、血液脳関門の機能が未熟であるため、影響を受けやすいとされています。また、「脳に何らかの基礎疾患を持つ患者さん」も注意が必要です。例えば、過去に脳梗塞や脳出血の既往がある方、脳腫瘍や頭部外傷の経験がある方、あるいはてんかんなどの神経疾患を持つ方は、健常な脳に比べて、わずかな環境変化でも症状が誘発されやすくなります。さらに、代謝性アシドーシス(体が酸性に傾いた状態)が重度である場合や、血中のナトリウム値が低い場合も、リスク因子となり得ます。これらのリスク因子を持つ患者さんに対しては、医療スタッフは、通常以上に慎重な透析導入計画を立て、不均衡症候群の発症を未然に防ぐための、特別な配慮を行うことになります。