多くのメリットを持つ在宅透析ですが、残念ながら、全ての透析患者さんにとって理想的な選択肢というわけではありません。この治療法を安全に継続するためには、患者さんとその家族が乗り越えなければならない、いくつかの重要な課題とデメリットが存在します。まず、最も根本的な要件が、「患者自身に、治療を遂行する強い意志と、高い自己管理能力があること」です。在宅透析は、医療スタッフの監視がない環境で、自分自身で日々の治療を管理しなければなりません。腹膜透析であれば、毎日の清潔なバッグ交換と、出口部の感染予防。在宅血液透析であれば、複雑な機械操作と、自己穿刺という技術的なハードル。これらを、毎日、間違いなく、根気強く続けるという、強い自己規律が求められます。次に、「介助者(家族)の理解と協力が不可欠である」という点です。特に在宅血液透析では、緊急時の対応などを一人で行うのは危険なため、トレーニングを受けた介助者の存在が、治療開始の必須条件となります。介助者にも、治療に関する知識の習得や、精神的・時間的な負担が生じることを、家族全員で理解し、受け入れる必要があります。また、「住環境の確保」も重要な課題です。腹膜透析では、バッグ交換を行うための清潔な空間と、大量の透析液や関連物品を保管しておくための、十分な収納スペース(畳1畳分程度)が必要です。在宅血液透析では、透析装置や水処理装置を設置するスペースと、簡単な電気・水道工事が必要となります。さらに、医学的な適応の問題もあります。例えば、過去に何度も開腹手術を受けていて、お腹の中に癒着がある場合、腹膜透析がうまく機能しないことがあります。これらの課題をクリアできるかどうか、そして、何よりも「自宅で自分の治療を管理する」というライフスタイルが、自分の性格や価値観に合っているかどうかを、医師や家族と十分に話し合い、慎重に判断することが、後悔のない選択に繋がります。