生活保護は、日本国憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を、国民全員に保障するための制度です。しかし、誰でも無条件に受けられるわけではなく、その利用にあたっては、いくつかの基本的な原則と要件が定められています。これを「補足性の原理」と呼び、生活に困窮した場合でも、まずは自分たちが持てる能力や資産、そして社会の他の制度を最大限に活用してもなお、最低生活費に満たない場合に、その不足分を補うという考え方です。具体的には、主に以下の「4つの活用要件」を満たす必要があります。第一に、「資産の活用」です。預貯金や生命保険、土地や家屋、自動車といった、生活に活用できる資産がある場合は、まずそれらを売却するなどして、生活費に充てることが求められます。ただし、居住用の家屋や、通勤・通院に不可欠な自動車など、その保有が社会通念上認められる場合もあり、一律に全ての資産を手放さなければならないわけではありません。第二に、「能力の活用」です。働くことが可能な方は、その能力に応じて就労し、収入を得る努力をすることが求められます。透析患者さんの場合、週3回の通院や体調の問題から、フルタイムでの就労が困難であることは十分に考慮されますが、体調が安定しており、短時間の就労が可能と判断されれば、その範囲での就労指導が行われることがあります。第三に、「扶養義務者の扶養の活用」です。親や子、兄弟姉妹といった、民法上の扶養義務者から援助を受けられる場合は、まずそちらを優先することが求められます。福祉事務所は、これらの扶養義務者に対して、援助が可能かどうかを照会します。ただし、援助が困難な場合や、DVなどの深刻な事情がある場合は、この限りではありません。最後に、「他の制度の活用」です。年金や雇用保険、各種手当、そして透析患者さんの場合は障害年金や各種医療費助成制度など、利用できる他の社会保障制度がある場合は、まずそちらを申請し、活用することが求められます。これらの努力を尽くしてもなお、生活が困窮する場合に、初めて生活保護の対象となるのです。