透析患者さんが管理しなければならない、もう一つの重要なミネラルが「リン」です。リンは、骨や歯を構成する主成分であり、エネルギーの産生など、体内で様々な役割を担っています。カリウムと同様に、健康な人であれば余分なリンは腎臓から排出されますが、透析患者さんでは体内に蓄積しやすくなります。血液中のリン濃度が高い状態が続くと、いくつかの深刻な問題を引き起こします。まず、血液中のリンとカルシウムが結合し、本来は骨にあるべきカルシウムが、血管の壁に沈着してしまう「異所性石灰化」が起こります。これにより、血管は弾力性を失って硬くなり、動脈硬化が急速に進行します。その結果、心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる心血管系の合併症のリスクが著しく高まるのです。また、高リン血症は、骨の健康にも悪影響を及ぼします。体は、血液中のリンとカルシウムのバランスを一定に保とうとするため、リンが高くなると、副甲状腺ホルモンというホルモンが過剰に分泌され、骨を溶かしてカルシウムを血液中に放出しようとします。これにより、骨がもろくなり、骨折しやすくなったり、関節に激しい痛みが現れたりする「腎性骨症(二次性副甲状腺機能亢進症)」という状態になります。この危険なリンをコントロールするためには、食事からの摂取を制限することが基本となります。リンは、タンパク質を多く含む食品(肉、魚、卵、乳製品、大豆製品)に豊富に含まれています。また、ハムやソーセージ、インスタント食品、清涼飲料水などの加工食品には、食品添加物として「無機リン」が多く使われており、これは食材に元々含まれる有機リンよりも体に吸収されやすいため、特に注意が必要です。しかし、タンパク質は透析患者さんにとって必要な栄養素でもあるため、リンの制限は非常に難しいのが実情です。そのため、多くの患者さんは、食事と一緒に服用し、腸管でのリンの吸収を抑える「リン吸着薬」という薬の助けを借りて、血中のリン濃度を管理しています。
骨と血管の健康を守る、「リン」のコントロール