なぜ、人生経験のまだ浅い20代という若さで、腎臓がその機能を失い、透析を必要とする事態に至ってしまうのでしょうか。高齢者の透析導入原因の多くが、糖尿病性腎症や腎硬化症といった、生活習慣病の進行によるものであるのに対し、若年者の場合は、それとは異なる、いくつかの特徴的な原因疾患が存在します。まず、最も頻度の高い原因の一つが、「慢性糸球体腎炎」です。これは、腎臓の血液をろ過するフィルターである「糸球体」に、慢性的な炎症が起こる病気の総称です。その中でも、特に若年者に多く見られるのが「IgA腎症」です。これは、免疫グロブリンの一種であるIgAが、糸球体に沈着することで炎症を引き起こす病気で、学校検尿などで血尿や蛋白尿を指摘されて発見されることが多くあります。多くは、ゆっくりと進行しますが、一部の患者さんでは、10年から20年という年月をかけて、徐々に腎機能が悪化し、20代や30代で末期腎不全に至ることがあります。次に、原因として挙げられるのが、「先天性腎尿路異常(CAKUT)」など、生まれつき腎臓や尿路に形態的な異常がある病気です。幼少期から腎機能が低い状態が続き、体の成長と共に、腎臓への負担が増大し、思春期から20代にかけて、透析導入が必要となるケースがあります。また、「多発性のう胞腎」のような遺伝性の腎疾患も、若年での透析導入の原因となり得ます。さらに、免疫システムが自分自身の体を攻撃してしまう「全身性エリテマトーデス(SLE)」などの膠原病や、血管に炎症が起こる「ANCA関連血管炎」といった自己免疫疾患が、腎臓を急激に障害し、若くして透析が必要になることもあります。これらの病気は、生活習慣とは無関係に、ある日突然、誰にでも起こりうるものです。若くして透析患者となったことは、決して本人の自己管理が悪かったわけではない。そのことを、本人も、そして周囲も、正しく理解することが、病と向き合う上での第一歩となります。
なぜ若いのに?20代で透析に至る主な原因疾患