食事療法や生活習慣の改善を試みても、なお便秘が解消されない場合、医師の判断で「下剤(便秘薬)」が処方されます。しかし、ここで絶対に守らなければならない鉄則があります。それは、「市販の下剤を、自己判断で絶対に服用しないこと」です。特に、多くの市販の便秘薬に含まれている「酸化マグネシウム」は、透析患者さんにとっては「禁忌(きんき)」、つまり、絶対に飲んではいけない薬です。なぜなら、マグネシウムは、腎臓から尿として排出されるミネラルであり、腎機能が失われた透析患者さんが服用すると、体外に排出できずに、体内にどんどん蓄積してしまいます。その結果、血液中のマグネシウム濃度が異常に高くなる「高マグネシウム血症」という、非常に危険な状態を引き起こします。高マグネシウム血症は、吐き気や筋力低下、血圧低下から、ひどい場合には、呼吸抑制や心停止に至る、命に関わる重篤な副作用です。このリスクを知らずに、安易に市販薬に手を出してしまうことは、極めて危険な行為です。透析患者さんに処方される便秘薬は、主に、腸管から吸収されにくい「浸透圧性下剤(ラクツロース、ポリエチレングリコールなど)」や、大腸を刺激して蠕動運動を促す「刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートナトリウムなど)」です。医師は、患者さん一人ひとりの便の状態や、他の合併症、服用している薬との飲み合わせなどを総合的に判断し、最も安全で適切な種類の薬を、最適な用量で処方します。便秘薬は、患者さんの体質によって、効きすぎたり、逆に効かなかったりすることもあります。薬を飲んでみて、下痢がひどかったり、効果が感じられなかったりした場合は、自己判断で量を調整したり、やめたりせず、必ず医師や薬剤師に相談し、自分に合った薬と量を見つけていくことが大切です。