透析治療の「ものさし」、ドライウェイトとは何か?
人工透析を受ける患者さんにとって、治療の目標設定や日々の自己管理の根幹をなす、最も重要な指標が「ドライウェイト(Dry Weight, DW)」です。日本語では「基礎体重」や「適正体重」と訳されます。ドライウェイトとは、一言で言えば、「体内に余分な水分や老廃物がなく、かつ脱水にもなっていない、最も体の調子が良い状態の体重」のことを指します。これは、透析治療を終えた後に目標とすべき、患者さん一人ひとりにとっての理想的な体重です。なぜ、このドライウェイトという概念が、透析治療においてこれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、腎臓の機能が失われた透析患者さんの体は、自分で水分量を調節することができないからです。次の透析までの間に飲んだり食べたりした水分は、尿として排出されず、全て体内に溜まっていきます。この溜まった水分が、心臓や肺に大きな負担をかけ、高血圧や心不全といった、命に関わる深刻な合併症を引き起こす最大の原因となります。透析治療の大きな目的の一つは、この溜まりすぎた余分な水分を、機械の力で体外へ取り除く(除水する)ことです。その際に、「どこまで水分を引けば良いのか」という目標値、つまりゴール地点となるのがドライウェイトなのです。ドライウェイトを適切に設定し、毎回の透析でその体重までしっかりと除水を行うことで、体内の水分バランスは正常に保たれ、血圧は安定し、心臓への負担も軽減されます。ドライウェイトは、単なる体重の数値ではありません。それは、透析患者さんの長期的な健康と生命予後を左右する、治療の成否を測るための、最も基本的な「ものさし」なのです。