血液透析患者の腕には、多くの場合、皮膚の下で血管がミミズ腫れのように浮き上がっている部分があります。これが「内シャント」と呼ばれる、透析治療に不可欠な、血液の出入り口です。シャントは、動脈と静脈を手術で直接つなぎ合わせることで、血流が豊富で、毎回の穿刺に耐えられる丈夫な血管(シャント血管)を育てたものです。透析患者にとって、このシャントは、治療を続けるための、文字通りの「命綱」であり、その存在は、生活のあらゆる場面で意識されます。まず、シャントがある腕は、常に特別な配慮が必要です。重い荷物を持ったり、腕時計をしたり、きつい服の袖で締め付けたりすることは、シャントの血流を妨げ、閉塞の原因となるため、固く禁じられています。血圧測定も、シャントのない側の腕で行わなければなりません。また、シャント部分をぶつけたり、傷つけたりしないように、常に保護する意識が求められます。そして、最も重要な日課が、「シャントの自己管理」です。毎朝、シャント部分にそっと指を当て、血液が流れる「ザーザー」という細かい振動(スリル)を感じ、耳を当てて、その音(シャント音)を聞きます。このスリルやシャント音は、シャントが元気に流れている証拠です。もし、これが弱くなったり、途絶えたりした場合は、シャントが詰まりかけている危険なサインであり、すぐに透析施設に連絡しなければなりません。シャントは、時に感染を起こしたり、狭くなったり、瘤(こぶ)ができたりと、様々なトラブルに見舞われます。その小さな変化にいち早く気づき、適切な処置を受けることが、命綱であるシャントを一日でも長く使い続けるための秘訣です。シャントと共に生きるということは、自分の体の一部となった、もう一つの「臓器」を、生涯にわたって大切に慈しみながら、管理していくことなのです。
命綱「シャント」と共に生きるということ