透析患者さんの食事療法において、最も厳格で、かつ最も重要な管理目標となるのが「水分」と「塩分」です。腎臓の機能が失われると、体に入った水分を尿として十分に排出することができなくなります。そのため、飲んだ水分は、次の透析までの間、体内に溜まり続けてしまいます。この溜まった水分が、透析間の体重増加として現れるのです。一般的に、透析間の体重増加は、中1日(月曜から水曜など)でドライウェイト(透析後の目標体重)の3%以内、中2日(金曜から月曜など)で5%以内に抑えることが理想とされています。例えば、ドライウェイトが60kgの人であれば、中1日で1.8kg、中2日で3.0kgの増加が目安です。この範囲を超えて体重が増えすぎると、体に溜まった余分な水分が、心臓や肺に大きな負担をかけ、高血圧や心不全、肺水腫(肺に水が溜まる状態)といった、命に関わる合併症を引き起こす危険性が高まります。また、透析治療で一度に大量の水分を除去(除水)しなければならなくなり、血圧の急激な低下や足のつり、吐き気といった、つらい副作用の原因にもなります。では、どうすれば水分の摂取を抑えられるのでしょうか。その鍵を握るのが「塩分」の管理です。塩辛いものを食べると、喉が渇き、どうしても水分を摂りたくなってしまいます。つまり、水分制限を成功させるためには、徹底した減塩が不可欠なのです。透析患者さんの1日の塩分摂取量の目標は、一般的に6g未満とされています。これは、健康な成人の目標値よりもさらに厳しい基準です。味噌汁やスープの汁は飲まない、麺類の汁は残す、醤油やソースは「かける」のではなく「つける」、香辛料や酸味を上手に利用して薄味でも美味しく食べられる工夫をするなど、日々の食生活の中で、塩分を意識した細やかな配慮が求められます。