末期腎不全になった場合の治療法は、透析療法だけではありません。失われた腎臓の機能を根本的に取り戻すことができる、唯一の治療法、それが「腎移植」です。腎移植とは、健康な腎臓を、他の方(ドナー)から提供してもらい、自分の体に移植する外科手術です。移植された腎臓がうまく機能し始めると、再び尿が作られるようになり、透析治療から離脱することが可能になります。腎移植には、提供してくれるドナーによって、二つの種類があります。一つは、親族(または配偶者)から、二つある腎臓のうちの一つを提供してもらう「生体腎移植」です。もう一つは、脳死や心停止となられた方から、ご本人やご家族の善意によって腎臓を提供してもらう「献腎移植」です。腎移植の最大のメリットは、透析治療に比べて、生活の質(QO”L”)が劇的に向上することです。透析のように週3回の通院や、毎日のバッグ交換といった時間的な制約から解放されます。また、水分や食事の制限も大幅に緩和されるため、食べたいものを自由に楽しむことができ、旅行やスポーツなど、活動範囲も大きく広がります。女性の場合は、妊娠や出産が可能になることもあります。しかし、腎移植にもデメリットや課題はあります。まず、他人の臓器を移植するため、体が異物とみなして攻撃する「拒絶反応」が起こるリスクがあります。これを防ぐために、移植後は毎日、免疫の働きを抑える「免疫抑制剤」という薬を飲み続けなければなりません。この薬には、感染症にかかりやすくなったり、他の副作用が出たりする可能性があります。また、日本国内では、特に献腎移植のドナーが極めて少なく、移植を希望して登録しても、何年も待機しなければならないという深刻なドナー不足の問題があります。腎移植は、全ての人に適応となるわけではありませんが、透析療法と並ぶ、末期腎不全の重要な治療選択肢の一つなのです。
透析だけではない選択肢、腎移植という道