夜間透析という選択肢、仕事と治療を両立する道
「透析を始めなければならない」と告げられたとき、多くの現役世代の患者さんが直面するのが、「仕事や学業を、これまで通りに続けることができるのだろうか」という深刻な不安です。一般的な血液透析は、平日の日中、週に3回、1回あたり4〜5時間という長い時間を必要とします。これは、フルタイムで働く会社員や、日中の授業に出席しなければならない学生にとって、キャリアや学業の継続を断念しかねない、極めて大きな障壁となります。このような、社会生活と治療の両立という切実な課題に応えるための重要な選択肢が、「夜間透析」です。夜間透析とは、その名の通り、夕方から夜間にかけての時間帯に透析治療を行う方法です。多くの施設では、午後5時や6時頃から透析を開始し、午後10時や11時頃に終了するスケジュールが組まれています。これにより、患者さんは日中の時間を仕事や学業、あるいは家庭での役割に充て、一日の終わり、あるいは仕事帰りに透析治療を受けることが可能になります。これは、単に治療の時間をずらすというだけではありません。それは、透析患者さんが「病人」として社会から隔絶されるのではなく、病と共に生きながらも、社会の一員としての役割や生きがいを失わずに、自分らしい人生を送り続けるための、極めて重要な医療体制なのです。もちろん、夜間の治療には、睡眠時間への影響や、実施している施設が限られるといった課題もあります。しかし、日中の自由を取り戻し、「透析のために生活を変える」のではなく、「生活のために透析を組み込む」という、主体的で前向きなライフスタイルを実現するための、強力な選択肢であることは間違いありません。